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まず、林業を始めたきっかけについて伺いたいと思います。
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親父が組合でずっと働いていたんだけど、やっぱり「大変そうだな」とかはずっと思っていて。若い時は大阪でファッション関係の仕事をしたあと、広島で配送の仕事をしていましたね。それから30代前半でこっちに帰ってきて、しばらくは別の仕事していたんだけど、「何か違うな」と思って。そこから組合に入りました。まだ親父も働いてましたね。
最初は親父について、草を刈ったりしていて、だんだんチェンソーで伐採の仕事なんかもさせてもらえるようになってきて。
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班長になられていた期間は15年くらいでしょうか?
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それくらいかなあ?自分が班長に就いたときには、もう親父も引退していて。前の班長から引継いで、最初はやっぱり緊張しましたけどね。まあだんだん・・・慣れてきましたけどね。みんなが助けてくれて、何とかなった、ホントにそれだけですね。
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班をまとめて引っ張っていく、というのは大変なことだと思いますが
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いや、ホント周りがみんな頑張ってくれて・・・そうだなあ、やっぱり気配りかな。
毎日みんなに声掛けはするようにしてるし、ちょっと元気がないように見えるときには「どうしたんだ?」って声を掛ける。そんなんの積み重ねですよ。
そういうことを積み重ねることで、「よしやろう!!」って同じ方向を向いて仕事ができる。みんなの経験が増えることで、難しい仕事をこなしたりもできるようになるし、信頼もされるようになる。結局、日々の気配りと経験の積み重ね。
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林業の仕事って大変なイメージが強い仕事ではあるのですが、仕事の中で感じる達成感って何でしょうか??
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やっぱり「ここまで草を刈る」とか決めてそこまでやり遂げた時の達成感ですかね。見た目で分かるじゃないですか。きれいになった、とか。
他のお客さんでももちろん褒めて喜んでもらえれば嬉しいんですけど、やっぱり個人のお客さんが自分じゃなかなかできなくて、終わってから「きれいになった!!」とホントに喜んでくれるのが、一番嬉しい。
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一番難しいな、と思ったことは何ですか?
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仕事としてやるからには、「ここまでやった方がいい」と思っていても、予算的にお客さんとの兼ね合いでできないこともあるかな・・・
ホントは「自分としてはここまでやりたいなあ」っていう葛藤はあるんだけど、やっぱりそこは仕事だからね。割り切らないといけないとこもあるしね。それがもどかしいな、と思うときがありますかねえ。
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30年以上の間に業界の変化をどのように感じましたか?
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大径木を伐ったり、色々技術が必要な特殊伐採が増えたかな・・・昔は普通の伐採の方が多くて、そんなになかったんだけどな、と思う。みんなが経験を積んでそういう特殊な技術が必要な伐採を任されることも増えたし。あと道具はかなり変わったよね。若い人が持っている道具を見て「こんなんがあるんだ」と思ったりする。
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林業の現場で安全に働くために心掛けていることは何ですか?
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そりゃあ、安全に働くっていうのが一番大事。結局、全部「木(気)配り」。現場の状況、配置、木の状況、天気・・・色んなものを見て、それぞれに気を配る。
そうやって気を配るためにはやっぱり経験が大事。一つ一つの経験を積み重ねて、もちろん失敗するときもあるし、失敗も全部ひっくるめて経験を積み重ねることで、気づくことがたくさんあるし、「あの時はこうだったな、こうした方がいいな」と判断できるし、それが積み重なることで、安全に仕事ができるんじゃないかな。最後は結局、気配りですよ。
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今年から、班長を退かれて橋本さんが班長になられましたが
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とても安心してみてられますね。しっかりしてますし、頼もしいですよ。自分で行動して、自分で考えて判断できる。自分よりも全然先を行ってくれているので、今は班長を降りて班のメンバーとして働いてますが、「行くよ!!」って言われて「はい!」ってついていく。そんな感じ。ホントね、安心してますよ。
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若い人たちに対して、林業の現場で働く魅力をどのように伝えたいですか?
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自分は「これしかできない」と思ってやってきたけど、草を刈ったりすると達成感が目に見えてわかることがこの仕事の魅力。
体はしんどいな、と思うこともあるけど「もう草刈りしたくない」と思うことはないかな。
家の田んぼの周りも草刈りするけど、家の仕事でも「絶対ここまで刈る!!」と決めて刈りきる。振り返って刈ったところを見たら、そりゃあ気分がいいですよ。目に見えて分かるでしょ、きれいになったのが。
終始控えめに「自分が話せることは何もない」とおっしゃっておられましたが、「難しい事」を伺ったときに、本当はやりたいけれどできない。できるのに、できない。65歳になってもなお、仕事への前向きさ、真剣さ、そして最後には「木(気)づかい」にすべて通じるのだと感じさせられました。
やり切った現場を思い浮かべている野村さんは爽やかな、達成感を感じさせる笑顔でした。