コンテナ苗とは

「コンテナ苗」は近年導入された比較的新しい造林用山行苗生産の技術で、平成20年ごろに生産が始まりました。コンテナ苗の生産量は年々増加しており、令和2年度には2千万本を超えて、国内の苗木生産量の約3割を占めています。


コンテナ苗の栽培方法については、 国や都道府県の研究機関・大学等で試験研究が進められ、 全国の苗木生産者による工夫や技術開発も行われた結果、全国的に生産技術が確立されつつあります。

植栽工程の効率化も見込まれることから、造林コストの縮減に大きく貢献するものと期待されています。

石央森林組合では、平成27年より平成29年まで3か年間、農林中央金庫の支援事業(みらい基金)事業に採択され、コンテナ苗の生産を開始しました。隣接する社会復帰促進センター、シルバー人材活用センターの協力、島根県、浜田市など各方面からご支援をいただきながら、コンテナ苗の試験研究を中心とした地域資源の有効活用に向けた具体的な取り組みを行いました。

現在は石央森林組合敷地内、及び提携業者のビニールハウス内でコンテナ苗の苗木の生産を継続しています。当組合で生産した苗木については、浜田市内の伐採跡地に造林補助事業で使われていて、森林再生に努めています。

コンテナ苗の特徴

従来の植林では裸苗という根鉢のない苗木が一般的でした。しかし、この裸苗は根が常に空気にさらされるため、乾燥に弱いという欠点がありました。また植栽時期も春と秋に限られていました。しかし、コンテナ苗は根鉢がついていることから乾燥に強く、誰でも植栽できて活着率が高いというメリットがあります。

特に林業では”低コスト林業”が研究されており、伐採に引き続いて植栽を行うことで、植栽にかかるコストを省力化することができるとして試みが進んでおり、「伐採と造林の一貫作業システム」の確立において重要な役割を担っています。

コンテナ苗は樹脂製のマルチキャビティーコンテナで育成される苗木で、培土と根がセットになった「根鉢付き苗」です。この鉢になっている1つ1つを「キャビティ」と呼び、この「キャビティ」を連結させたものを「コンテナ」と呼びます。

同じような根鉢付きの苗で「ポット苗」がありますが、こちらも研究が試みられたことがありますが、根巻きが発生して植栽後の活着が悪く、普及には至りませんでした。

コンテナ苗はキャビティの側面にリブやスリットが入っており、底部は開いているため空気に接して成長が止まるので、根巻きが起こらない構造になっています。

当組合ではリブ付、スリット入り両方のタイプのコンテナを使用しています。

コンテナ苗のメリット

・土がついた根鉢付き苗であり、裸苗と比較すると活着率が高くなっています。

・専用の植栽器具を用いることで、効率的に作業を行うことができます。植栽時間は普通苗の3分の2から半分程度で可能になります。

・根鉢付き苗のため、厳冬期は難しいものの幅広い時期での植栽が可能になっています。一貫作業では伐採時期と植栽時期のタイミング連携が難しくなるのですが、コンテナ苗は植栽時期を選ばないので伐採後すぐ植栽ができ、これらの作業を連携させる一貫作業の工程が組みやすくなり、造林コストの削減が可能になります。

コンテナ苗の課題

・コンテナ苗の価格は普通苗(裸根苗)より高く1.5倍以上の価格となっています。このコストを補完するためにも、一貫作業による植栽費用の削減や、コンテナ苗の生産コストを下げる技術開発が求められています。

・コストを削減するためには、伐採→植栽の連携を図ることが必要なため、伐採と植栽をそれぞれ違う業者が行う場合は、業者間の連携を取ることが必要になります。石央森林組合では伐採から植栽へと連続した作業を行えるよう、地元の伐採業者と連携を取りながら、伐採と造林の一貫作業の推進を図っています。

コンテナ苗の生産

当組合では、スギのコンテナ苗を育成しています。

コンテナ苗の出荷基準は、苗齢1~2年、高さ30㎝以上です。

根系がしっかりしている必要があります。根の発達が不良の場合は、培土が取れてしまいやすく、植栽後の成長も見込めません。

培土

培土には、ココナツハスク(ココピート)、ピートモス、バーク堆肥、鹿沼土などを混合して使用しています。水と肥料・培土を隙間がないようにしっかりと詰め込んでいきます。

詰め込みが甘いと、移植時に潅水した際に土が落ち込み、芽生えに日光が当たりにくくなったり、生育のための土が不足したりします。芽生えを移植する際に、穴あけ器具が入りにくいくらいの固さまで詰め込みますので、かなりの力仕事が続きます。

育苗箱への播種~移植まで

3月頃に天候などを見ながら育苗箱へ播種を行っております。発芽した芽生えを4月~GWあたりを目処にキャピティに移植していきます。播種から芽生えまでは、3週間ほどかかります。

移植方法

  • 毛苗移植
  • 幼苗移植
  • プラグ苗移植
  • 直接播種
  • さし木苗移植法

播種から移植の方法としては上記のような方法があります。プラグ苗移植・直接播種などの方法も試みてはきましたが、現在は当組合では芽生えを移植する毛苗移植を中心に行っています。芽生えが大きくなりすぎると移植が難しくなりますので、移植は短期集中で作業に臨みます。

苗の移植はピンセットと専用に作られた穴あけ道具を使って、手作業で行われます。

当組合は標高250m程度ありますので、組合周辺では4月はまだ霜が降りたり、寒い時期が続きます。したがって、苗の初期育成時期にはハウス内は密閉し温度を上げ、発芽と初期成長を促進させます。また一方で、GWになると一気に気温も上がって成長が進みすぎることもあります。年によって気温が不安定なことも多いですので、気温を見ながら注意深く、かつ迅速に作業が行われます。

毛苗移植法とは

育苗箱で毛苗を栽培し、これをコンテナに移植して栽培する方法です。育苗箱に種子を播き、発芽して苗長が2~3cm になった毛苗をコンテナに移植します。その後、苗が 10cm 以上に成長したらハウスから外へ出し野外育苗施設で栽培を継続します

”林野庁 コンテナ苗生産の手引き”より引用

移植後の管理

令和4年より当組合から7kmほど離れた提携農家さんの協力を得て、ビニールハウス内で苗木を育成しています。これまでよりビニールハウスの規模も大きく、散水設備も整っていることから、管理効率が上がり、病害虫の防除なども適切に行うことができるため、順調な苗木育成につながっています。

移植してすぐの小さな苗は、直射日光に弱いですので、遮光ネットがあるハウス内で育てます。苗が10~15cmに成長し、培地にしっかりと根を張り、コンテナの底から根が見えるようになったら、屋外に出します。夏の強い日差しにさらされることで日焼け障害を引き起こす可能性がありますので、外出しは日射が少なく気温が高すぎない梅雨時に行っています。

水やりについて

苗木の成長がするにあたって、特に夏に向かう季節になりますので、水やりの管理が重要になります。当組合では、春~梅雨時期は1日に1回、夏は朝晩の1日2回、秋は1日に1回程度の水やりを行っています。水分が多すぎると病害虫の発生にもつながりやすくなりますので、状況を判断しながら適切な水やりを行っています。

苗木の出荷

コンテナ苗出荷時には、キャピティから抜き取って根鉢での出荷となりますので、運搬中に根鉢が崩れないかをしっかり確認しています。

抜き取りは手作業でも可能ですが、当組合では専用の機械を使用しています。

抜き取り後、大きさ、根張りなどの基準に適しているか計測します。基準をクリアしていることを確認後、梱包して出荷します。出荷に適したコンテナ苗の根鉢の状態は、表面を覆う根の表面積割合が20%以上が目安だとされています。

植える付けまでに苗木が乾燥したり、根鉢が崩れたりするのを防ぐため、当組合ではだいたい10本程度の苗を1束にして、幅10cmの梱包用ラップで梱包した上で、段ボールや苗木用のネットの袋などに入れて運搬します。